「学び場」の提供が
自発的な接客を促し
外国人顧客のリピート率がアップ

"おもてなしの志"を今に受け継ぐ「人形町今半」

「人形町今半」は明治28(1895)年に牛鍋屋として創業以来、130年以上の歴史を誇る、すき焼としゃぶしゃぶで知られる日本料理の専門店。この老舗では、正社員だけでなく、準社員と呼ばれているアルバイト・パートスタッフの方向けにも、20年以上前から独自に英語研修を取り入れるなど研修の充実を図っており、スタッフは学んだ英語や知識を使って、海外からのお客様に行き届いたサービスを提供しています。
こうした応対により、外国人顧客のリピート率がアップし、売上増加にも寄与しているようです。そこで実際に働かれているスタッフの方や、研修の立ち上げから運営まで携わってきたマネージャーに、職場が"学びの場"となる効果についてお話を伺いました。

  • ●社名/株式会社人形町今半
  • ●創業/1895年
  • ●本社所在地/〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2丁目9番12号
  • ●資本金/4,300万円(グループ合計、2018年8月)

「カタカナ英語」など
"超初心者"にも配慮した英語研修

人形町今半では、創業から変わることなく、高品質の料理を温かいうちに美味しく食べていただきたいとの想いから、接客スタッフがお客様の席に付きっきりで、すき焼やしゃぶしゃぶを作るサービスを行っています。 こうした接客業務のほか、予約・案内業務、ドリンク業務などで、20代~70代と幅広い世代の準社員(アルバイト・パートスタッフ)が活躍しています。

人形町今半人形町本店で活躍する、予約対応や店内案内などを担う塚見さん

準社員のひとりである塚見さんは現在、人形町今半人形町本店で準社員として予約対応や店内案内などを担当し、勤務年数は12年を数えます。 この仕事に就いたきっかけは、「着物を着て仕事をしたい、所作や作法も身につけられると思ったから。」仕事開始と同時に、着付けと所作・作法の研修もスタートしました。「研修のおかげで、自宅で食器を差し出すときに袖をすっと上げる、電話でもゆっくりと丁寧な言葉遣いで話すようになりました。以前のがさつな私からの変化に、家族からは驚かれるほどでした。(笑)」。

着付けの様子

人形町今半ではここ数年、海外からのお客様の来店や電話での問い合わせが増えていましたが、英語が苦手な塚見さんは「できるだけ応対しないように陰に隠れるようにしていた」といいます。そんな時に、英語研修の話があり、不安な気持ちで参加。 当初は英語の発音もおぼつかない中、外国人の先生は「できなくてもいいから、教えたことをもう一度声に出してみて!」と根気よく丁寧に指導を実施してくれました。そのおかげで、自発的に仲間と励まし合って勉強するなど、徐々に研修の時間が楽しくなり、「英語が苦手な私たちでも英語ができるという、不安が自信に変わりました。内容が難しくなっても、仲間と励まし合い頑張ってこられたことが良かったですね。」と楽しそうに話されていました。

英語教材の例

英語研修は就業時間内に、週3時間を3ヵ月(12週)集中で実施。入門、初級、中級の3段階があり、塚見さんは入門編の「カタカナ英語研修」と初級研修を6カ月間受講しました。カタカナ英語研修とは、英語のスペルに発音をカタカナで表示した独自の教材を使って行う入門編の研修。塚見さんは「カタカナ英語研修があることで、ミドル・シニア世代の仲間でも抵抗がなく学びやすかったですね。たまたま息子のお嫁さんがアメリカ人ということもあり、英語会話ができるようになって本当に嬉しい。仕事中に英語が学べて感謝しています。」と話されていました。

よりワインを楽しんでもらえように――
ソムリエ資格研修も実施

人形町今半人形町本店で活躍する、接客対応を担う久保木さん

正社員として接客を担当する勤続年数1年の久保木さんは、アルバイトとして入社しました。塚見さんのように英語研修を終え、現在はソムリエ資格研修を受けています。「お客様にサービスする時に、ソムリエバッジが胸にあれば、与える印象も変わってくると思い、あのバッジを目指して現在奮闘中です」。 シニアソムリエの店長が研修を実施しており、毎年ソムリエの資格認定試験の合格者を輩出。合格者には、お祝い金として受験費用とソムリエ登録料を会社が負担しています。

研修の一環として、先日葡萄狩りを体験。「葡萄狩りに出かけた先で、ワイン生産者と直接話をすると、自ずと知識や見方も変わってきます。私が手にした葡萄が数年後にはワインになってお店に並ぶ。そのワインをお客様に薦めるときに『原料の葡萄の収穫に私も立ち合った』と話を添えるだけで説得力が増し、お客様もより美味しさを満喫できると思います。」と話されていました。

分け隔てなく研修の門戸を
広げる真意とは

人形町今半では正社員、準社員に分け隔てなく、研修の門戸を広げています。それは、職場において正社員、準社員で特に業務内容を区分けしているわけでもなく、またお客様から見れば、スタッフの一員だからです。

飲食部 マネージャーの髙岡さんは20年以上前に自身が中心となって始めた英語研修をはじめ、さまざまな研修を取りまとめ実施してきました。年齢、スキルなどさまざまな条件の方が入社してくるため、能力の均一化を図るために社内研修は必要不可欠。「研修はまさに試行錯誤の連続でした。これだけ手厚く研修を提供している会社はおそらく他にはないと思います。」と話されていました。実際に英語、ソムリエ資格のほかに、書道研修、中国語研修なども実施されています。

さまざまな研修をコーディネイトしてきた飲食部 マネージャーの髙岡さん

正社員向けだけではなく、準社員向けにも学習環境を提供した結果、研修の充実を魅力に感じた応募者が増加している実感もあるといいます。また、「学び場」が自発的な接客を促したことで、外国人顧客のリピート率が前々年比で194%と伸長しており、売上増加にも寄与しています。 今後も手厚い"おもてなし"を実現する上で必要な内容であれば、正社員、準社員の分け隔てなく参加できる研修を新たに加えていくようで、働きがいだけでなく、「学び場」としてもますます充実していくことでしょう。